児童同士のトラブル対応どうする?②「教師の仲裁の入り方」

  前回は、子どもから訴えがあったらの対応について書いて来ました。今回は、実際に仲裁に入ったときの指導の仕方をまとめていきます。

個別聴き取りの原則

 訴えがあった児童の話を聴き、両者に指導を入れた方がいいと判断した場合は相手のの児童にも話を聴きます。学級担任の先生方の時間が無いことは重々承知ですが、このときにできるだけ「個別に話を聴きとる」ようにします。理由としては、事実確認を正確にしたいことと、後に両者を交えた話し合いの練習をしたいことがあります。

 訴えられた子が仮に手を出していたり悪口を言っていたりした場合、いきなり訴えてきた子の前に呼び出されて事実を認めるのはハードルが高い場合があります。特性のある子であればなおさらです。なので個別に呼び出し、相手から訴えがあったことを伝え、心当たりがあるかを尋ねます。子どもによく尋ねるのは、「自分が嫌だったことと、自分がやっちゃたなと思うことを教えて」と言います。どうしても相手に考えがいきがちなところを、「自分」がどうだったかに考えをもってこれるようにします。そのうえで、「嫌だと思ったこと」は受容して共感を示し、それを「私は○○がいやだった。やめてほしかった。」と今度からIメッセージで相手に伝えればよかったことを確認します。

 「自分がやってしまったこと」を聞くときは、「答え方に幅をつくってあげること」が大切です。やったかどうかだけに注目すると、子どもが「やっていない」と答えたらそこで終わりです。なので、「似たような言い方はなかった?」「そのつもりはなかったけど、相手にそうとられるような可能性はなかった?」「ぶつかった可能性は0かな」などと、「やった」「やってない」の二択ではない聴き方を教師の引き出しにストックしておくことが必要です。そのうえで、少しでも認められた部分があれば、正直に言えたことを褒めて、教師としてその子の心の成長を嬉しく思うことを伝えます。

 「嫌だったこと」と「やってしまったこと」が整理できたら、次は話し合いの見通しです。両者が顔を合わせる場で、どんなことを話し合うのか見通しをもたせてあげたうえで、両者を引き合わせるようにします。

なんのための場か

 子ども同士を合わせて話をする際には、「これから二人が気持ちよく過ごしていくにはどうすればいいかを考える場だよ」と最初に目的を確認します。ここを確認しないと、子どもたちは過去の変えられないトラブルのどちらが悪かったに視点がいき、やったやっていないの不毛な責任の押し付け合いが始まります。トラブルを成長の機会に変えるためにも、これからという未来志向を子どもたちがもてるようにします。

 話し合いの約束は2つです。「嘘をつかないこと」と「相手の話を最期まで聴くこと」です。話し合いの中で嘘をついてしまうと、話し合いが解決しません。また、後に嘘がばれた場合、嘘をついたことで叱らないといけなくなることを伝えます。また、「相手の話を最期まで聴くこと」を確認しておかないと、自分が納得いかないときに相手の話に被せるように文句を言ってしまい、せっかくの解決の場が新たなトラブルの場になってしまいかねません。

 先の聞き取りで、お互いの事実確認に大きなズレが無い場合は、それぞれに「嫌だったこと」「自分がやってしまったこと」を伝えるように促します。事実確認に重大なズレがあった場合は、二人がいる場で擦り合わせをしたり、必要に応じて第三者をよんだりします。ただし、目的は「これから」どうしていくかなので、微細なズレはお互いに飲みこむような大人の対応を求めるときもあります。「先生は神様でもないし、監視カメラがあるわけでもないから、正確な事実はわからない。」

 お互いがそれぞれ伝えられたうえで、つぎ同じ場面があったらどうすればいいかを一緒に考えたり、教師から助言したりします。

謝るか否か

 よく話題にあがる教師が促す形式的な「ごめんなさい」「いいよ」の構図。最近は子どもたちに委ねるようにしています。繰り返しになりますが、話し合いの目的は、「これから二人が気持ちよく過ごしていくには」です。謝った方がお互いにすっきりするなら謝ればいいし、謝らずとも話し合いをしてお互いが納得してこれからに視点をもっていけるならそれでいいと思っています。ただし、「何かしてしまったら先生も副校長先生や他の先生にごめんなさいを言うことはあるよ。」と大人になったときに謝ることが必要な場面があることや、謝れる心の強さがかっこいいことは伝えるようにしています。

 よくあるやられた側の子からの「謝ってくれなきゃ納得できない」みたいなところは正直苦労します。やってしまった子が素直に謝れないときはなおさらです。ただ、「やられたから謝罪を要求して当然」という思考も子どもにつけたくないので、「やってしまったことは認められたけど、ごめんねを言うにはまだもうちょっと勇気がいるみたいだ」や「やってしまったことは認められているけど、今回はここまででちょっと大人の対応をしてもらえるかなあ」などと、他にも選択肢があることを示すこともあります。

 「ごめんね」を言えたとして、その返答はどのように皆さんは促しているでしょうか。何も教えないと「ごめんね。」「いいよ。」の典型文で終わりになることが多いと思います。お互いがそれで納得していればいいのですが。私は、返答の引き出しもいくつか教えるようにしています。「いいよ。もうしないでね。」「謝ってくれてありがとう。でも、まだすぐには許せない。」など、教師が見ている場で、自分の気持ちを適切な言葉で伝える練習の場になるようにしています。

まとめ

 今回は、子ども同士のトラブル対応を2回に分けてまとめてみました。正直書ききれない部分や一筋縄ではいかない部分が多々あります。ただ、軸となるのは「子どもたちが自分たちで解決していける力をつけるための成長の機会になるように」という願いです。皆さんはどのような対応をしているでしょうか。私の指導に共感できる部分、異なる部分など、コメントいだけたら幸いです。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA